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(旧)長野市民会館

写真家として、建築物からその時代をみつめると面白い。
この建物は1961年、東京オリンピック開催直前の高度成長期に建てられた。
ファインダーを覗くと、
この建物をつくった人々の強い心意気を感じる。
モダンなレンガづくり、コンクリートの壁面にはめ込まれたステンドグラス、
真っ赤に彩られたステージは斬新でまぶしすぎるくらいだ。
舞台に立った者は誰もが興奮したに違いない。
目をこらせば、市民会館の建物には、
建築家の繊細でいておおらかな発想と、
職人たちの粋な手仕事が随所に見られる。
当時としては、かなり実験的な空間だったことと思う。
48年の時を経たレンガ壁はさらに美しさと温もりを増している。
館内に入れば、竣工当時、人々が驚嘆する声がすぐそこに聞こえてきそうだ。

現代アートの作品を見るように私は自分の感性のおもむくまま、
カメラを通してこの建物の魅力を再発見してみた。
そこには「昭和」という時代が生み出した結晶が残っている……。

みなさんもちょっと足をとめて、
もう一度、この建物を見つめなおしてみませんか。

■ 長野市民会館

■建物データ
設計者:佐藤武夫設計事務所
所在地:長野県長野市緑町1647
主用途:市民会館
竣工:1961年         
■建築家•佐藤武夫のことば
塔というものの発生は道しるべなんです。どこにだってその当時の精神支配の建築はみな塔を持っています。狭い意味の合理主義で考えたんじゃ、塔というものは無用の長物と見えてくる。もっと広い、深い精神性からみますと、ああいうものが本能的に欲しいんですね。キリスト教の寺院の塔が町の通りの突き当たりにスッと見えるような、スカイラインのたのしさというようなものが近代の都市には欠けてると思うんです。ですからつとめて都市に植えつけていきたい。